中国の建築3・・汕頭騎楼・陳慈黉故居・・

広州と同様港町として栄えた汕頭にも騎楼がありますが、汕頭の騎楼と広州の騎楼では、意匠だけでなく建物そのものの持つ意味合いにも大きな違いがあります。それもそのはず。今でこそ行政区分は同じ広東省ですが、「広州」と汕頭含む「潮汕」エリアは、言語も違う異なる文化圏だから。

広州が政府公認、半官的広州十三行が貿易を行った町だったのに対し、汕頭は民間、海外貿易で成功した華僑商人の街。小公園と呼ばれる旧市街に軒を連ねる汕頭騎楼は、広州よりも断然デコラティブです。レトロな商標や看板も汕頭騎楼ならでは。「打卡」(映える撮影場所)ポイントとしての汕頭文字が新旧至るところで見られます。
柱や窓枠などの掘りも質実剛健な広州騎楼よりも随分と豪華です。海外貿易で得た富を持ち帰り、その成功の証しとしての建築が汕頭騎楼。華僑の人々の、栄華を子孫に遺そうとする宗族意識の表れですね。少し過剰な装飾に中国語の看板や文字、それらが風化した様には不思議な異世界感があります。もとデパートなどは民国期にタイムスリップしたようです。

陈慈黉故居は汕頭市街から高速を使うとタクシーで約1時間ほど。主にタイを拠点とした貿易で成功した大大大富豪の大きな大きな邸宅跡地です。西洋から取り寄せた色とりどりのタイルがふんだんに使用され、階段から欄干から美しい彫りがこれでもか!というほどに施されています。
中国と西洋のミックス具合が見所。木彫の民間工芸が盛んな潮汕エリアです。外国からのタイルに中華の吉祥文木彫花板が組み合わされていたり、一面のタイル床に中華様式の木彫家具が配されていたり。
石造りの柱や階段、窓枠に至るまで精巧な彫りがめぐらされて、そんな石工の技術も楽しめます。ルーツは同じとは言え、伸びやかに広がるのは唐草文ではなく、西洋式なアカンサス。そんな中に中国結文等が加えられていており、見つけるたびに胸が高鳴りました。

かなり朽ちてはいましたが、パステルの粉彩の瓦。こちらは、高台皿としてご紹介したりしてきた輸出品の器を思わせますね。汕頭の港から多くの陶磁器が船の重りとして積み込まれてきたのでしょう。
ちなみに、トーマス機関車のごとく愛らしい魚の眼のある木造の貿易船「紅頭船」は、潮汕歴史文化博物中心という無料博物館で模型を見ることができますよ。五行思想に基づいて港ごとに色が異なり、広東南方は火に属すことから赤色の船です。とにかく顔が可愛い。
脱線しました。一見中庭のように見える「天井」とよばれる吹き抜けの空間は、天から気を降ろす風水思想からきていて、植物を配する四合院の中庭とはまた違った様相です。中、外、中、外と雨の日はかなり不便でしたでしょうね。
1日に2回、10:30と14:30に潮汕伝統芸能の英歌舞の表演もあり運よく楽しめました。汕頭でも辺鄙な村にあるので、観光シーズンは帰りのタクシーが拾いにくいのだそう。最悪、長時間にはなりますがバスが市内まで通っているので割高な包車は手配せず、行ってしまおうという旅スタイル。でも、この日はすぐに捕まり幸いでした。

建物は文化的背景が分かると当時の人々の暮らしが見えるようで、面白いですね。